私たちが佐川町斗賀野に移住する決意をしたのは2015年の春。その際の決め手は、私たちが植栽や庭づくりに試行錯誤できる場所があることでした。それは私たちの仕事である植栽設計を行う上でとくに必要でした。私たちが「実験的に」植栽の研究を行いたい植栽手法が大きく4つあります。1つは宿根草や低木を帯状に植栽するボーダー植栽(border planting)。2つ目は草原を取り込み、開放的で粗放的なメドゥ植栽(meadow planting)。3つ目は雑木林と林床の植物で構成するウッドランド植栽(woodland planting)。4つ目は畑や果樹園といった自給自足的な機能を持つ植栽・ガーデンで、これには家畜の存在も重要になってきます(allotment / cottage garden)。これら植栽手法について、植物の組み合わせ方法や作業方法、作業時期など、高知の気候風土に合った手法の確立に試行錯誤すべく、移住することにしたのでした。
欧米での植栽に関する研究やその情報は多くあるのですが、高知県のような環境での植栽に関する情報は少なく、どのような植物がどのように生育していくのか、その記録(情報)をこの場所で収集する必要があります。斗賀野エリアという環境は高知市などと比較してみるとやや特異な点もありますが、それでも年間の降水量が多く、冬場の最低気温が厳しく、夏場は高温多湿という高知的な気候です。
宿根草や低木を使ったボーダー植栽は、私たちがとりわけ好きな植栽スタイルです。四季の変化が面白く、魅力的であるものの、思った通りに生長しなかったり、その土地ならではの作業が必要になったりします。手始めにこのボーダー植栽と隣接するメドゥ植栽を作ることから動き出しました。
移住する前の2015年の夏から、数年間手付かずの畑だった原野を開墾し、やっと2016年の春に宿根草や樹木を植え付けました。
その経過を写真で振り返ってみます。
8月の酷暑でほとんどの宿根草は休眠状態になり、一部に白絹病が出ました。9月5日頃から生長を始めたものの、7月までの生長量が多く、また切り戻しのタイミングを逃したため、草姿が乱れてしまいました。来期への課題です。秋生長と開花は11月いっぱい続き、12月になっても落葉しないものもあり、冬季の切り戻しのタイミングを悩ませました。
病害虫としては、春以降に毛虫類が見受けられたものの生物農薬のBT剤を3回散布し、しっかりと効果がありました。アブラムシも出ましたがこれらは天敵のテントウムシや寄生バチも集まってきて顕著な被害はなく、生態系に任せました。5月頃と10月頃にうどんこ病が広がり始めたので生物農薬のボトキラー水和剤、ひどい場合にカリグリーンを使用しました。白絹病は夏場に出現して、致命的な株が少なからず出てしまいました。薬剤を使用してもイタチごっこになるので、次の冬のマルチング実施の有無や施肥量を検討します。なお、私たちの病害虫防除の考え方の根幹はIPM (Integrated Pest Management) に基づいています。
植え付け初年度としては、予想よりもよい状態でした。4月から梅雨入り前は最高に気持ちのよい状態でした。5月の生命力溢れる植物の姿と陽気の心地よさは外仕事の至福です。
梅雨前の切り戻し、梅雨以降の管理、白絹病対策、夏季休眠時の切り戻し、冬季の切り戻しと施肥量が課題です。