モデルガーデン ボーダー & メドゥ植栽2015〜2016

私たちが佐川町斗賀野に移住する決意をしたのは2015年の春。その際の決め手は、私たちが植栽や庭づくりに試行錯誤できる場所があることでした。それは私たちの仕事である植栽設計を行う上でとくに必要でした。私たちが「実験的に」植栽の研究を行いたい植栽手法が大きく4つあります。1つは宿根草や低木を帯状に植栽するボーダー植栽(border planting)。2つ目は草原を取り込み、開放的で粗放的なメドゥ植栽(meadow planting)。3つ目は雑木林と林床の植物で構成するウッドランド植栽(woodland planting)。4つ目は畑や果樹園といった自給自足的な機能を持つ植栽・ガーデンで、これには家畜の存在も重要になってきます(allotment / cottage garden)。これら植栽手法について、植物の組み合わせ方法や作業方法、作業時期など、高知の気候風土に合った手法の確立に試行錯誤すべく、移住することにしたのでした。

欧米での植栽に関する研究やその情報は多くあるのですが、高知県のような環境での植栽に関する情報は少なく、どのような植物がどのように生育していくのか、その記録(情報)をこの場所で収集する必要があります。斗賀野エリアという環境は高知市などと比較してみるとやや特異な点もありますが、それでも年間の降水量が多く、冬場の最低気温が厳しく、夏場は高温多湿という高知的な気候です。

宿根草や低木を使ったボーダー植栽は、私たちがとりわけ好きな植栽スタイルです。四季の変化が面白く、魅力的であるものの、思った通りに生長しなかったり、その土地ならではの作業が必要になったりします。手始めにこのボーダー植栽と隣接するメドゥ植栽を作ることから動き出しました。

移住する前の2015年の夏から、数年間手付かずの畑だった原野を開墾し、やっと2016年の春に宿根草や樹木を植え付けました。

その経過を写真で振り返ってみます。

2015年2月の様子。イタドリやススキ、イヌビワ、その他多くの野草や低木が休眠している原野。

2015年8月の様子。もともと溜まっていた枯れ木や枯れ草を整理して焚き火に。旺盛に成長してくる草たちは頻繁に刈り払われた。多年生の草は掘り起こした。

過去に刈り払われたり伐採された草や樹木の堆積物。これらの処分もなかなか大変だった。アシナガバチなどの巣がないか、慎重さも必要。

2016年2月の様子。耕耘機で耕して整地し、植え付け前の苗の準備中。上段がボーダー植栽予定地、下段がメドゥ植栽予定地。

2016年2月。耕耘機で耕し、整地作業後。この年の冬は比較的暖かく、梅の開花が早かった。

このような植栽図(ボーダー植栽)を作って思案した。各植物の生長による株幅、季節ごとに変わる高さ(ボリューム)、開花時期、花や枝葉の色合い、病害虫、日当たり、風通し、土壌、灌水条件や人的な作業条件など、考慮する点は複雑で関連しあっている。そのため、その土地でその植物がどのように育つかの情報を得ることはとても重要。

2016年3月に植栽開始。レイアウトをとり、植栽図を参考にしつつ、現場の状態を考慮し、植物の生長後の姿をイメージしながらその場で配置を決定していく。植栽間隔などは特に重要。

2016年3月の植栽作業。中央はコウライシバの通路を予定。通路の両サイドに帯状の植栽となり、これをボーダー植栽と呼ぶ。

2016年3月。メドゥ植栽エリアにも植栽。樹木で空間の骨格を構成。20年後くらいを見据えて樹木を選んだ。地表はノシバ(野芝)をベースに宿根草などを組み合わせて植栽する(写真には野芝は写っていない)。

2016年4月の様子。宿根草や低木の植栽後に、表土にバーク堆肥を40〜50mm厚でかぶせるマルチング作業を行った。マルチングには乾燥防止、防寒、土壌の物理性の改良、土壌生物の活性化、保肥性の向上、視角効果など様々なメリットがある。反面、高知県のような夏場が高温多湿になる環境では白絹病の発生を促すことがあり、気をつける。

2016年6月の様子。乾燥した気候が続き、順調に生育している宿根草や低木類。通路にはコウライシバ(高麗芝)を貼ったが、灌水が足りず、乾燥等で芝の緑がまだらになっている。

2016年6月の様子。植栽初年度なので開花量は少ないが、枝葉の色合いやテクスチャーの違い、力強く生長する姿に嬉しくなる。中央は3歳の長男。

2016年6月のボーダー植栽。グラス類で植栽の流れとリズムを作った。グラス類は性質が強いものが多く、高知の気候に合っているものが多い。夏にかけての切り戻しのタイミングが難しい。

2016年7月の様子。イヌラ・マグニフィカ(Inula magnifica)が2.5mほどに生長している。

2016年7月。ルドベキア・マキシマ (Rudbeckia maxima) が初年度から開花。元肥がちょっと多かったためか、一年目としてはやや過繁茂気味。

8月の酷暑でほとんどの宿根草は休眠状態になり、一部に白絹病が出ました。9月5日頃から生長を始めたものの、7月までの生長量が多く、また切り戻しのタイミングを逃したため、草姿が乱れてしまいました。来期への課題です。秋生長と開花は11月いっぱい続き、12月になっても落葉しないものもあり、冬季の切り戻しのタイミングを悩ませました。
病害虫としては、春以降に毛虫類が見受けられたものの生物農薬のBT剤を3回散布し、しっかりと効果がありました。アブラムシも出ましたがこれらは天敵のテントウムシや寄生バチも集まってきて顕著な被害はなく、生態系に任せました。5月頃と10月頃にうどんこ病が広がり始めたので生物農薬のボトキラー水和剤、ひどい場合にカリグリーンを使用しました。白絹病は夏場に出現して、致命的な株が少なからず出てしまいました。薬剤を使用してもイタチごっこになるので、次の冬のマルチング実施の有無や施肥量を検討します。なお、私たちの病害虫防除の考え方の根幹はIPM (Integrated Pest Management) に基づいています。

植え付け初年度としては、予想よりもよい状態でした。4月から梅雨入り前は最高に気持ちのよい状態でした。5月の生命力溢れる植物の姿と陽気の心地よさは外仕事の至福です。
梅雨前の切り戻し、梅雨以降の管理、白絹病対策、夏季休眠時の切り戻し、冬季の切り戻しと施肥量が課題です。

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