今まで取り組ませていただいたプランニング/デザインの一例をご紹介いたします。
パン屋さんのガーデンリフォーム・デザイン・施工
(のはらぱん様)
おいしい天然酵母の焼きたてパンとパリ仕込みのパティシエが作るお菓子が魅力の「のはらぱん」さんのガーデンを任せていただきました。ここは、パンやお菓子の販売の他に、カフェスペースがあってランチをいただくことができます。民家を改修して作られたお店です。
下見に伺わせていただいた時に、お庭には立派なイチョウやカキ、ユズやウメ、ツツジ、宿根草などがあり、以前に住まわれていた方の植物への思い入れが感じ取れました。 時間を経て大きくなった樹木は、ガーデンの骨格となり、成熟したダイナミックな印象を与えてくれます。これらの樹木を活かしたデザインを試みることにしました。また、依頼主様からは次の点のご要望をいただきました。
- 季節の花々で彩りが欲しい
- ハーブを使った植栽が欲しい
- 樹木類がこれ以上大きくならないようなプランニングを立てて欲しい
このご要望をお聞きして、パッと思いついたイメージから次のようなコンセプトを立てました。
- 【初夏〜秋】心地よい緑に風が流れ、木漏れ日がそそぐ庭
- 【冬〜春】暖かな日差しに包まれる庭
コンセプトは理想像です。この理想に加えて、お店の特徴や条件からデザインのポイントを想定しました。
- このガーデンの利用者:依頼主、お客さん
- 依頼主とガーデンとの関わり方:ガーデンでの作業可能時間は週1〜2時間、夏場の灌水は毎日でも可能。ナチュラルガーデン嗜好。
- お客さんの層:女性が多い、30〜60代、近所の方、依頼主の知人・友人。
- ポイント1:住宅地の中であり、お店が目立ちにくい。そのため、ガーデンの入り口(=お店の入り口)は、お客さんを誘い込むオープンフェイス型にする。
- ポイント2:カフェスペースからの視点と外からのプライバシーに留意。
- ポイント3:雨の日でも安心できる、明瞭で安定した通路。
- ポイント4:駐輪スペース。
- ポイント5:自然素材と風化した感じのある素材を使う。
- ポイント6:簡単な日常作業と春夏秋冬1回ずつの定期メンテナンス。
- ポイント7:生態系を作り、農薬に頼らない(総合的病害虫管理)。
- ポイント8:季節の移ろいを感じさせる植栽プラン。
上記以外にも予算などいろいろな条件から細かなポイントを想定しました。
重要なのは、現実的な条件を排除した理想イメージ(コンセプト)に、現状の条件をつき合わせることです。現実的な条件からコンセプトを組み上げると、発想に乏しくなってしまいます。夢のような理想に、現実をどれだけ合わせていけるか、そこに実務的な技術力が要求されるのだと思います。
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右の写真は入り口部分。作業経過(上)と作業後(下)。 道路に面した部分に常緑低木のロニセラ・ニティダ(Lonicera nitida)を植栽して、定期的に刈り込みを行っていきます。そのうしろは、果樹農家さんからいただいたニホンナシの剪定枝を編み込んだフェンス。道路に立つと視線を遮るか遮らないかという高さにし、枝の隙間が空いているので外側からも内側からも気配を感じることができる境界になっています。
入り口部分の写真の施工途中(左)と施工後(右)です。右の写真では、左手に先述のフェンスとロニセラが見えます。レンガのアプローチは店舗の入り口まで続きます。駐輪できるようにアプローチ部分は広めにとってあります。
写真左は通路のレンガを施工している所です。以前は土が露出していたので、雨が降るとぬかるんで歩きにくくなりました。右の写真は通路のレンガを施工してしばらく経過した写真です。落ち着いた雰囲気の風化したような加工を施してあるウォッシュドブリックを使っています。明瞭で安定した通路になりました。
左の写真はガーデン内です。写真上段は施工前、写真中段と下段は施工後です。施工前は平坦で、雑草もはびこっていました。
カフェテーブルを設置できるようにコンクリート板を再利用してスペースを作りました。また、砂利敷きの通路を作り、まとまりとメリハリのある植栽スペースができました。また、枝を編み込んだフェンスがほどよく視界を遮って植栽を引き立てています。写真下段の左手の植栽はハーブ類を植えています。中央のレンガが積まれた構造物は、以前にバーベキューコンロとして使用されていたもので、少し手を加えて、レイズドベッドにしました。
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このガーデンは3回に分けて施工を行いました。これは、通路などの施工上の都合もありましたが、植物の移植や植え付けにあった季節があるためです。
今後は、依頼主様の日常のお手入れの他に、専門スタッフによる樹木の剪定、樹木と宿根草の育成、アプローチ部分の植栽の定期的植え替えなど、各季節ごとにメンテナンス作業を行います。枝で編み込んだフェンスは5年ほどで朽ちるので、編み込み直すか、ロニセラの生長が旺盛であれば、別のタイプのフェンスを施工することになります。
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